東京高等裁判所 昭和33年(ネ)440号 判決
被控訴人勇平がフエルト葺居宅につき抵当権を設定したことは、将来その競落人のためその敷地賃借権の譲渡を約したものであるとのこと、被控訴人秀夫が同勇平のかゝる地位を承継したため右建物の競落人たる控訴人に対し右敷地の賃借権を譲渡するに至つたとのこと、そして右譲渡につき賃貸人名取の承諾を得なかつたとのこと、賃貸人名取が右賃貸借契約解除の意思表示をしたので被控訴人秀夫は賃借権を失い被控訴人らは本件土地を占有すべき権原を失つたとのこと、を除くその余の事実は当事者間に争がない。
よつて右争点につき判断すると、建物所有を目的とする土地賃貸借において賃借人が地上建物に抵当権を設定しその登記手続を経た場合には、その抵当権実行による競落人のため、予じめ右土地賃借権の譲渡を約したと認むべきものであつて、その後土地賃貸借権が第三者に譲渡せられたときは、かかる土地賃借人の地位はその第三者たる譲受人によつて当然承継されるものというべきである。されば一旦競落の結果競落人が右建物所有権を取得するときは、これに伴つて土地賃借権は当然に競落人に譲渡されるものと解するのを相当とする。従つて前示認定の如く、被控訴人勇平がフエルト葺居宅に抵当権を設定したことは、将来その抵当権実行により右建物を競落する者に対し予じめその敷地賃借権の譲渡を約定したものと認むべきであつて、被控訴人秀夫は右抵当権設定登記以後に被控訴人勇平から本件土地賃借権を譲受けた以上その競落人に対する関係において右地位を当然承継したものというべく、従つて控訴人が右建物を競落し代金を払込んだ本件においては、控訴人はこれに伴つて右建物所有権を当然取得しかつその敷地の賃借権を譲受け右敷地を使用するに至つたものというべきである。
(松田 猪俣 沖野)